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鎌倉殿の13人で話題|太宰治の小説『右大臣実朝』のあらすじと感想

「右大臣実朝」太宰治
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2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も、いよいよ大詰めに近づいてきました。

皆さんは御覧になっていますか?

歴史好き、三谷幸喜好きの私は、毎回欠かさずテレビに張り付いて見ています笑

平家を滅ぼし、源家の世となったものの、源義経や範頼ら、源頼朝の兄弟の悲運の最期に続き、頼朝亡き後は二代将軍・頼家が比企の乱の後に幽閉され死去。

そして三代将軍・源実朝の代にもまた、頼朝挙兵以来の忠臣であった畠山一族や和田一族が争乱の果てに討ち死にするなど、鎌倉に立ち込めるダークな魔の影はちっとも消える様子がありません。

源家の悲劇の将として名高いのは義経ですが、12歳で三代将軍となった実朝という人物もまた、後世の作家の創作心をかきたてる悲しくも浪漫に満ちた魅力があるようです。

それは享年28(満26)歳で、雪積もる鶴岡八幡宮に散った命のはかなさゆえでしょうか。それとも、今にも伝わる名歌の数々を残す歌人としての魂が共鳴を呼ぶためでしょうか。

今回ご紹介するのは、この実朝に少年時代から憧れ、くるしいときは必ず実朝を思い出していたという文豪が、命あらば実朝を描いてみたいという念願をかなえて書いた作品です。

それは太宰治の『右大臣実朝』。

さっそく紹介していきましょう。

hontoiru
hontoiru
  • ブログ管理人:hontoiru
  • 編集ディレクターを経て現在はフリーライター
  • 本業では主に飲食系やエンタメ系のライティングを担当
  • 趣味は読書、歴史、カフェ巡りなど
目次

鎌倉殿の13人で話題、太宰治『右大臣実朝』はこんな人におすすめ

太宰治の小説『右大臣実朝』は、こんな人におススメです。

  • 2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週楽しく見ている人
  • 悲運の将軍・源実朝に興味がある人
  • 文豪が描く「鎌倉三代将軍像」に興味がある人
usausa

正直、古文調で書かれているから慣れていない人には難しく感じるかもね

hontoiru

それが大河ドラマを見ていると、俳優さんの顔が浮かんでくるから分かりやすいんです。むしろ、今読まないでいつ読むの?というくらい。

太宰治『右大臣実朝』のあらすじ

鎌倉三代将軍・源実朝の生涯を、『吾妻鏡』などの引用を交えながら描く太宰治初の歴史小説。

物語は、源実朝のかつての近習だった男の視点で語られます。近習は初めて実朝の元へあがった幼い日に、自宅が焼けたことに呆けたようにだらだらと涙を流している善信入道(三善康信)を見て、いけないことながら思わずくすっと笑ってしまったのですが、尊い身分であるはずの実朝もまたこちらを見て一緒に笑ってくれたことから、「神さまみたいに尊く有難く」感じ、死んでもお傍を離れまいと思ったといいます。

それは実朝の、下々の者にはない、屈託のない明るさに憧れたためでした。例えば疱瘡の病によってできた顔の醜いあばたを残念がる尼御台(母・北条政子)にも、「スグ馴レルモノデス」と白い歯をちらと覗かせて笑いながら返した対応を見ても、近習は「あのお方はまったく余人とはずば抜けてちがっている」と心から慕うのでした。

その後も、歌人として融通無碍、一点のわだかまりもない素晴らしい和歌を詠んでは周囲の者を驚かせ、政治的にも至極もっともな採決をためらいもなく口にして相州(北条義時)らも納得させる、清々しいほどの貴人としての姿が語られていきます。

しかし、やがて和田の乱が起き、相州と相いれない諍いが起きると、次第に将軍は以前ほど政務に力を入れず、朝廷と寺社への話にのみ関心を持つようになってしまいさらには和歌さへ詠む数が減ってゆき……。

太宰治『右大臣実朝』のレビュー

太宰治「右大臣実朝」

『走れメロス』で、真の友情を誓うまっすぐな心のメロスが、幾たびもの難関を越えて友のもとへと駆け走り、「人の真心など信じない」という王を改心させる物語を描いた太宰治。

きっと彼には、人たるもの、王たるものこうあるべきと切望する理想像があるのでしょう。その理想像が今回の薄幸の将軍・実朝へ投影されたものと思います。それこそ焦がれるような表現で、実朝は神性をもって明るく朗らかに描かれており、実朝の尊くもおおらかなその心を理解しない者たちは、みな下々の愚か者とされます。

しかし創作である『走れメロス』とちがって、『右大臣実朝』は史実をもとにした歴史小説。細かなことは書き換えられても、大きな事件は変えようがありません。実朝の素晴らしさに皆がひれ伏し、めでたしめでたしというわけにはいかないのです。

作中、実朝に会いにはるばる京から鎌倉へ訪ねて来た鴨長明が、出家していながらあわよくば将軍の和歌のご指南役でも努めたいという出世欲、いわば承認欲求の下心を捨てられないでいるのを実朝に見抜かれるシーン。

真面目なのにどこかに下品さがあるという北条義時に「あなたには戦がわからない」と声を荒げられるシーン。

そして、宋(中国)へ渡る大船を由比ガ浜で作ったものの結局船は海に浮かばず、指揮した陳和卿はとんずらしてしまい、あっけなく異国へ渡る計画が打ち切りになるシーン。

尊い身にはふさわしくない愚かしくてままならないいくつもの場面を経て、気高くおおらかな心を次第に折られていったのか、実朝はいつしか政務をあきらめ遊興に耽っていきます。

それはかつて若き日の実朝が、滅亡した平家の話を聞いて「平家ハアカルイ」と口にした、言葉そのまま。

「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ」

作品の中で、実朝が発する言葉はすべてカタカナで書かれており、それが独特の透明感を彼に与えています。なんとも切なく美しい太宰の実朝像。

しかし、作品の後半、実朝の運命の相手となる公暁は、まるで今までの王朝絵巻のような夢物語から一気に現実へと引き戻す強烈な生々しい個性を放って登場します。私は実朝に陶酔しながら、公暁にも惹かれるものを感じました。

この実朝と公暁の夢と現実、あるいは神と人のような両極端の個性の対比を、ぜひ作品でご覧になっていただきたいと思います。

太宰治のプロフィール

太宰治 ダザイ・オサム

(1909-1948)青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

新潮社公式サイト 著者ページより

まとめ:太宰治『右大臣実朝』

今回は、現在NHKで放映中の2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にちなみ、太宰治の『右大臣実朝』をご紹介しました。

かの文豪・太宰治が少年のころから書きたいと願い、それを実現させた小説『右大臣実朝』。この小説への太宰の想いは、下記に紹介する『右大臣実朝 他一編』(岩波文庫)の中に「鉄面皮」という題で収められています。太宰の羞恥と過剰なる自意識がいっそ愛しくなる、『右大臣実朝』の予告編ともいうべき想いがあふれた随筆です。あわせてぜひ読んでみてください。

※源実朝が詠んだ歌について興味のある方は下記もおすすめです。

この作品はこんな方におすすめです。

  • 2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週楽しく見ている人
  • 悲運の将軍・源実朝に興味がある人
  • 文豪が描く「鎌倉三代将軍像」に興味がある人

■太宰治ほか文豪の名作が好きな方、気になっている方には森見登美彦が名作をリメイクした下記の作品もおすすめです。

それでは、また次の本でお会いしましょう。

いつも本と一緒。本と いる。

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