日本の幻想美術の開拓者として知られる、澁澤龍彦。小説家であり、フランス文学の翻訳者でもあります。マルキド・サドの小説を翻訳し、これがわいせつ文書にあたるかどうか裁判となった『悪徳の栄え』事件は有名。澁澤龍彦の作品は読んだことはなくても、名前は聞いたことはあるという人は多いのではないでしょうか。
耽美主義な幻想小説家としても、遺作となった『高丘親王航海記』が有名ですが、人間の暗黒面、エロス、フェティシズムなどを語る多彩なエッセイを数多く残しています。
今回は澁澤龍彦ならでは、身震いするほどの麗しい表現で語られるインテリアエッセイ『夢のある部屋』をご紹介しましょう。
澁澤龍彦の鎌倉での暮らしぶりも、本当に素敵で憧れてしまいますよ♪
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「夢のある部屋」はこんな方におススメ!
澁澤龍彦のエッセイ『夢のある部屋』は、数ページの短いエッセイがたくさんつまった作品集。いかにも耽美主義的な普段は見かけない言葉も多く出てきますが、読みやすいのでスキマ時間や寝る前に少しずつ読むのにも最適です。
※ちなみに耽美主義とは、既成の道徳よりも「美」に重きを置く考え方のこと。
まずは、こんな方におススメします。
- 実践的なノウハウではなく、内面から美的センスを高めたい方
- 有名作家の私生活を覗いてみたい方
- 耽美や幻想といったワードに惹かれる方
それではあらすじからスタートしていきましょう。
「夢のある部屋」のあらすじ
窓や扉、鏡、時計など、それぞれワンテーマから著者の豊富な知識に裏打ちされたイマジネーションで綴られるエッセイ集。目次には、「飾るということ」、「額縁のなかの春」、「振子の音」、「鏡の魔法」、「夜を演出する」など詩情さえ感じるタイトルが並ぶ。
雑誌「ミセス」(桃源社刊)に連載されたエッセイ「夢のある部屋」を表題とし、そのほか、「夢のある部屋」に関連したエッセイを河出文庫の編集部が独自に選び編集した「夢のある風景」、「鎌倉風物詩」、「衣裳について」、「愛の変奏」、「遊びのすすめ」を含む。
ほか、澁澤龍彦の自宅写真なども掲載。
「夢のある部屋」のレビュー
美術批評家でもあった澁澤龍彦が語る「夢のある部屋」。それだけで、一体どんな美意識に満ちた部屋だろうかと身を乗り出してしまいます。
期待はすでに最初のページから裏切られることなく、装飾とはなにか、というテーマから始まり、ぞくぞくするような華麗な言葉の連なりで、今まで思いもしなかったほどの自然界の美しさ、人工物の美しさが語られていきます。
楽器を語るときにはディズニー映画からギリシア神話のオルフェウスへ、
筆者の好きな色だという”白”を語るときにはフランスの象徴派詩人マラルメの詩や、英国のビアズリーの白黒の線描へ、
窓を語るときにはロメオとジュリエットの朝の雲雀の声や、ジュリアンソレルが梯子をのぼってマチルドの部屋に忍び込むシーンへと、
圧倒的な古今東西の知識に裏打ちされた、艶のあるエロティックなイメージが縦横無尽にあふれ出して、読み手のイマジネーションを高めてくれます。
単にクローゼットをどこに置くか?収納スペースをどうするか?といったインテリアの話ではありません。一つの飾り、一つの窓、一つの鏡からこんなにも想像力は羽ばたいてゆくのか、ということに大いに刺激を受けることでしょう。そう思えば、何気ない我が家の窓も何やら憂いある窓辺…に見えて来る……かも。うん?
澁澤龍彦の鎌倉での暮らしぶりも描かれており、あまりにも素敵すぎて私の鎌倉へのあこがれが募るばかりです笑
※同書には、「夢のある部屋」以外にも、貞操帯についてなど澁澤らしいフェティシズムについて書かれたエッセイが含まれていますので、その点ご注意ください。
澁澤龍彦のプロフィール
澁澤龍彦(しぶさわ・たつひこ)
一九二八ー八七年。東京生まれ。本名龍雄。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介するかたわら、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた。その著作は『澁澤龍彦全集』『澁澤龍彦翻訳全集』にまとめられている。
「夢のある部屋」(河出文庫)より
「夢のある部屋」のまとめ
今回ご紹介した澁澤龍彦の『夢のある部屋』は、澁澤龍彦の独自の美意識で描かれたインテリアや暮らしにまつわるエッセイ集でした。
この本はこんな方におススメです。
- 内面から美的センスを高めたい方
- 有名作家の私生活を覗いてみたい方
- 耽美や幻想といったワードに惹かれる方
耽美主義で知られる澁澤龍彦の世界に、まずは触れてみたい方に最適な一冊。流麗な言葉の連なりから呼び起こされるイマジネーションの広がり。エロスとフェティシズムにあふれた独自の美意識をぜひ開いてみてください。
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それではまた次の本でお会いしましょう。
いつも本と一緒。本と いる。
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