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『失敗の科学』マシュー・サイド|失敗した人を責めてしまうたった一つの理由

マシュー・サイド「失敗の科学」
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突然ですが、あなたは失敗することを「恥ずかしい」「怖い」と、思っていませんか?

それはなぜでしょう。

「だって周囲から非難されるから」

なぜ周囲は非難するのでしょうか?

その理由はたったひとつ。

結論から言ってしまいますね。

それは、「世界があまりにも複雑すぎるから」なのです。

usausa

んん?待って、どういうこと?

hontoiru

ですよねー

「いきなりわけが分からないことを言いだしたな」と思ったあなたにこそ、読んでほしい本があります。

世界的ベストセラー、マシュー・サイドの『失敗の科学―失敗から学習する組織、学習できない組織』。

今回は私たちが日ごろもやもやしている、失敗にまつわる心理メカニズムについて解き明かしてくれる一冊をご紹介したいと思います。

hontoiru
hontoiru
  • ブログ管理人:hontoiru
  • 編集ディレクターを経て現在はフリーライター
  • 本業では主に飲食系やエンタメ系のライティングを担当
  • 趣味は読書、歴史、カフェ巡りなど
目次

マシュー・サイド『失敗の科学』はこんな方におすすめ

マシュー・サイド『失敗の科学』は、こんな方におすすめします。

  • 失敗してしまって落ち込んでいる人
  • 組織のマネジメントに悩んでいる人
  • 失敗を次へ活かす方法が分からない人
usausa

まあ、他兎の失敗は1番刈りのチモシー味っていうからね

hontoiru

usausa、恐ろしい子……!

『失敗の科学』の内容

著者のマシュー・サイド氏は、オックスフォード大学を首席で卒業した異才のジャーナリスト。

彼が、医療業界、航空業界、グローバル企業、プロスポーツリームなど、あらゆる業界を取材、検証し、失敗の構造を解き明したのがこの『失敗の科学』です。

サブタイトルは「失敗から学習する組織、学習できない組織」であり、集団のマネジメントに最適な本ですが、個人として読んでも充分に考えさせられる有益な書です。

本書は人間の心理メカニズムを解きながら、ドキュメンタリーとしても胸に迫るものがあります。妻を医療事故で亡くした夫の問いかけ、最善を尽くしたにも関わらず飛行機事故の責を負わされ、一人海辺で命を絶ったパイロット……。一つひとつの事例に感じられる、人間の命の重みや尊厳にも心を打たれます。

『失敗の科学』のレビュー

失敗の科学

なぜ人は失敗してしまうのでしょうか。

しかも失敗には、知識・才能・努力は関係ないのです。『失敗の科学』の中には、高度な知識をもっている医者や、経験豊富な航空機のパイロットたちが失敗した実例が多く出てきます。彼らは決して怠けていたわけでも、経験が足りなかったわけでもありません。むしろミスをしないように、全力で集中していたことが災いしてミスを引き起こしていた場合もあるということが分かります。

さらに最悪なことに、失敗した本人はその失敗を隠そうとしたり、あるいは無意識のうちに自身の記憶を塗り替えてしまうことも。また周囲の人たちは、責任者と思しき人を徹底的に非難し吊るし上げて断罪して満足してしまったりします。

本当に大切なのはなぜ失敗したのかを検証し、再び起こらないように備えることなのに……。あなたもきっと、失敗にまつわるあれこれには、理不尽だったり消し去りたかったりする思い出があるのではないでしょうか。

同書には、人間の認知や記憶のゆがみについて教えてくれる多くの「驚くべき」「残酷すぎる」事例が載っていますが、その中から特に印象深かったものを二例挙げてみます。

予言を外した教祖に、カルト信者がとった意外な行動

「いついつに世界が終末を迎える」と告げた教祖の予言が外れた場合、カルト信者たちはどうするでしょうか。

私は彼らはがっかりして脱会するか、教祖に「この詐欺師め、どうしてくれるんだ!!」と詰め寄るのかと思いました。しかし、なんと彼らは「私たちが神を信じたから神はチャンスを与えてくれた、私たちが世界を救ったのだ!」とさらに熱心な布教活動に励むようになったのだそう。

驚くというか呆れてしまいますが、これは誰もが陥りがちな心理的メカニズムで、人は自分の過ちを認めるよりも事実の解釈を変えてしまい、自分を正当化してしまうのです。

「カルト宗教」というと自分には関係ないと思う人もいるでしょうが、実は人間はたいてい《自分は頭がよいから簡単にだまされたりしない》と思っているため、その自尊心と現実の矛盾が大きすぎた場合、心の中で収集がつかなくなってしまいます。そこで自分に都合の良い解釈をして、矛盾による苦しみから逃れようとしてしまうというわけです。

日常のささいなことの中でも、誰にでも思い当たることがあるのではないでしょうか。

更生プログラムが逆効果、少年を殺人鬼に変えた悲劇

1970年代後半のアメリカで、刑務所で実際に囚人たちとの交流を体験させ、非行少年の犯罪抑止につなげようとするスケアード・ストレート啓蒙プログラムが行なわれていました。

同プログラムは再犯率が劇的に下がるとされ、その素晴らしい効果をメディアは続々と取り上げ、判事、裁判官、そのほか様々な専門家も賛同して、世間にも受け入れられました。囚人たちも善意から少年たちを脅しつけ、聞くもおぞましい卑猥な言葉でからかったりして「こんな恐ろしいところには二度と来たくない」と思わせようとしていました。

この「凶悪な犯人に対面して更生する」という劇的なストーリーが、世間の注目を集めたのです。

しかしこのプログラムは、実際は効果がないどころか、かえって子供たちの再犯率は高くなることが明らかに。プログラムに参加したアンジェロという少年はその4年後に、隣のアパートの19歳の女性をナイフで殺害した挙句レイプしていたことがわかりました。

衝撃的なのは、アンジェロが刑務所で受けた数々の屈辱的なプログラムの中で、ほかの子供たちの前に立たされて読まされたという当時の新聞記事の内容。そこにはナイフによって、被害者が何度も繰り返し刺されていた事件が書かれていたのです。このショッキングな記事を強制的に読まされた出来事が、アンジェロの心に打ち消し難い傷として深く残り、かえって犯罪へ駆り立てていたものと思われるのです。

そして今、アンジェロは子ども時代にプログラムを受けた同じ刑務所に入っているととか。ゾッとする負のループですね。

このようなプログラムはきちんとした検証をされないまま、世間の脚光を浴びて多くの専門家が称賛したことで多数の州で実施されていました。検証に乗り出したラトガース大学法科大学院のフィンケナウアー教授につきつけられた真実のデータを見ても、プログラムの支持者は認めず猛烈な抗議を始めたとか。

やはり、これも人間は自分が深く信じていたことを否定されると、考えを改めるどころか強い拒否反応を示し、ときにその証拠をつきつけた相手を攻撃しだすという心理的メカニズムが働いているのでした。

『失敗の科学』が教えてくれる失敗した人を責めてしまう理由とは?

失敗の科学

さて、ここで当記事のタイトルでも触れた「なぜ失敗したら責められるのか?」について簡単に説明しておきましょう。簡単に、と言ったのは詳しくは本書を読んでいただきたいからです。

失敗というのは本来、徹底的に検証され、次は同じ失敗を繰り返さないよう改善に役立てられるべきものです。人は誰でも失敗をおかします。それは能力や気質、注意力などではカバーしきれないほど。

なぜなら、この世界はあまりにも複雑な事情がからみあっていて、一つの失敗の責任を簡単に一つの原因に求めることは難しいからです。同書には医療ミスや飛行機事故、冤罪事件など、命に係わる失敗の事例が数多く挙げられています。それを読めば、失敗への対処が「だれか一人に責任をとらせて罰せばそれでよし、次はうまくいくだろう」といった単純なものでは意味がない、むしろ逆効果であることがよく分かるでしょう。

それなのに、未だに何かミスや事件が起これば犯人探しが始まり、徹底的に失敗した人が晒され、叩かれて、ときには自殺にまで追い込まれています。これは、人間の脳は複雑な事情を理解するよりも、さっさと物事を単純化してしまいたがる、いわば省エネ思考で済ませたがっているからだとされるのです。

これが冒頭で「なぜ周囲は非難するのか」に対する答えとして、「世界があまりにも複雑すぎるから」と書いた理由です。

ここからは私見ですが、『失敗の科学』というこの本は、世界各国で翻訳されベストセラーになっているわけですが、それでも「失敗した人を責める」「失敗した人には罰を与えればいいと思っている」という風潮はまったくなくなりそうにありません。

同書は数々の実際の事例から、人間の心理メカニズムを解き明かした名著ですが、その根底には「失敗によって失われた多くの人々の命や幸せ」を無駄にしてはいけない、という想いが流れています。

この本を読んだ人は、「ああ、それ知ってる、それはこれこれこういう心理メカニズムなんだよ」とうんちくを語ることだけに済ませず、「失敗した人を責めない」「失敗したときは隠さず何が悪かったか検証する」「悪いのは失敗であってその人ではない」「自分が間違っていた時は素直に認める」ということを、重く受け止めて実行していってほしいと思います。

それでこそ、生きる読書だと思います。

もちろんこれは自分へも強い警告として。

だって誰しも大きな失敗をしてしまう可能性はゼロではないのですから……。

マシュー・サイドのプロフィール

マシュー・サイド
1970年生まれ。英『タイムズ』紙の第一級コラムニスト、ライター。オックスフォード大学哲学政治経済学部(PPE)を首席で卒業後、卓球選手として活躍し10年近くイングランド1位の座を守った。英国放送協会(BBC)『ニュースナイト』のほか、CNNインターナショナルやBBCワールドサービスでリポーターやコメンテーターなども務める。

Amazon 著者について より

『失敗の科学』のまとめ

多数の国で翻訳された世界的ベストセラー、マシュー・サイドの『失敗の科学』。オックスフォード大学を首席で卒業した異才のジャーナリストが人間の失敗にまつわる心理メカニズムを解き明かします。医療ミスや航空機事故、冤罪事件など、数々の実例をもとに、失敗を未然に防ぎ、生産性を高める組織作りを教えてくれる一冊です。

  • 失敗してしまって落ち込んでいる人
  • 組織のマネジメントに悩んでいる人
  • 失敗を次へ活かす方法が分からない人

上記のような方におすすめします。

ビジネスにはもちろん、人生訓としても非常に役に立ちます。あなたが失敗したとき、あるいは周囲の人が失敗したとき、それを責めるのではなくどう対応していけばいいのかが分かるでしょう。

失敗談だけでなく、失敗から成功する秘訣もしっかり書かれていますので、興味をもった方はぜひ読んでみてください。

現在『失敗の科学』は、Kindle Unlimitedで読むことができます(30日間無料体験できます)。

Kindle Unlimitedって何?と思った方は、こちらの記事をあわせてどうぞ。

それでは、また次の本でお会いしましょう。

いつも本と一緒。本と いる。

マシュー・サイド「失敗の科学」

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