浅田次郎の傑作長編、『蒼穹の昴』。
清王朝の末期を舞台にした波乱万丈の歴史小説は、徹夜必至の面白さ。
私の人生のおすすめ本ベスト5に必ず入る作品です。
いずれじっくりレビューを書くつもりだったのですが、なんとここで一大事件が発生していることに気づきました。
……びっくりして今もう一度Amazonへ確認しに行ってきましたが、2022年11月現在、
Kindle Unlimitedで『蒼穹の昴』一巻が読めるようになっています。
Kindle UnlimitedとはAmazonが提供する電子書籍が月額980円で読み放題できる、いわば本のサブスク。しかし、Kindle Unlimitedには30日間の無料体験がついているため、まだKindle Unlimitedに入会していない方は、『蒼穹の昴』一巻をなんと無料で読めてしまうことに。
Kindle Unlimitedとは?とハテナマークが浮かんだ人はKindle Unlimitedの説明から登録・解約方法まで詳しく書いた記事がありますので、あわせてご覧くださいね。
これはもう「蒼穹の昴」を布教するしかない、この面白さ、感動を……!
ということで、いつもより若干興奮ぎみで始めてしまいましたが、今回は浅田次郎『蒼穹の昴』をご紹介いたします。
あわせて読みたい、時代背景がわかる書籍も掲載しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- ブログ管理人:hontoiru
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- 趣味は読書、歴史、カフェ巡りなど
浅田次郎『蒼穹の昴』はこんな人におすすめ!
浅田次郎の『蒼穹の昴』はこんな人におすすめします。
- ハラハラ、ドキドキするような波乱万丈の物語が読みたい方
- 歴史が好き、中国や日本の近現代史に興味がある方(なくても大丈夫!)
- 読み応えがある長編作品を探している方
『蒼穹の昴』は、文庫本で全四巻ある長編作品です。
「え?そんなに長いの?」
とちょっと腰がひけた方もいるかもしれませんが、はまればとんでもなくオモシロイので一気読み必至。
宝塚歌劇で上演されているので、観劇前後に原作を読んでみたいという方にも一巻が無料でお試しできるのはよいチャンスだね。
そうなんです~~。宝塚大劇場公演では終了してしまったのですが、11月26日〜12月25日まで東京宝塚劇場で公演されます。
宝塚歌劇公式ページはこちら
それでは内容について紹介していきましょう!
浅田次郎『蒼穹の昴』のあらすじ
時代は清朝末期。
「汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう──」
そう占い師の老婆・白太太(パイタイタイ)に予言されたのは、財宝どころか生まれてこの方「希望」すら持ったことのない、糞拾いの貧しい少年・春児(チュンル)でした。
その話を聞いた春児の幼馴染である兄貴分・文秀(ウェンシウ)は、自分もまた幼い頃に、白太太から将来は皇帝に仕える大物になるだろうと告げられたことを思い出します。そのとき、ちょうど文秀は五度にわたる科挙の予備試験に、優秀とされていた兄を差し置いて合格したところでした。
裕福な家の次男である文秀は科挙の本試験を受けるため都・北京に上り、そのお供として春児も上京することに。そこで二人は、それぞれの数奇な運命へと歩み出すことになります。
文秀は全国各地から郷里きっての秀才が集まる科挙の試験会場で、七十年以上も浪人を続けているという謎の老人から奇跡を受けて、一言一句揺るがすこともできない見事な答案を書き上げ合格。
一方の春児は、かつて後宮の大総監に昇りつめながら今は盲いた物乞いとなった老人と出会い、自らの性器を切り落とし宦官となって後宮での出世をめざす道を選びます。
狂人が出るほどの科挙の試験の苦しみと、命がけで行なう壮絶な浄身(チンシェン/去勢)の痛みを乗り越え、やがて清王朝の権力の中枢に関わってゆくことになる二人の運命とは……?
西太后、光緒帝、李鴻章、袁世凱……。
それぞれの野望と権謀術策が渦巻く紫禁城のロマンあふれる傑作が、この一巻から走り出します!
浅田次郎『蒼穹の昴』のレビュー
読めば一気に惹きこまれていく浅田次郎の作品世界。
論語や四書五経の難解な一節が度々登場しながらも、文意はわかりやすく、みなぎる言葉が力強く胸を叩きます。むしろ壮大な中国史の凄みがビシビシ伝わって来て「かっこいい……!」としびれるほど。
いつしか主人公・春児や文秀と共に北京のさびれた胡同(フートン/路地)を彷徨い歩き、科挙の試験会場に張り詰める鬼のようなプレッシャーにおののき、刀子匠(タオヅチャン/去勢を行なう職人)が行なう凄惨な去勢シーンに息を飲んで、一体これから二人の身に何が起こっていくのか、ハラハラしながらページをめくってしまいます。
ちなみに、私は久しぶりに読み返して、意外なところでぐっと来てしまいました。
それは、文秀と共に科挙の試験を受けた王逸(ワンイー)の母親が、試験のため泊っている王逸の宿にはるばる遠方から纏足の足で歩きどおして息子に会いに来たというシーン。王逸の家は貧しく、頭の良い息子に高等な教育を受けさせたいために、母親は王逸を金持ちの家へ養子に出していたのでした。
「実は、ゆうべ夜中にな。おふくろがこっそり宿を訪ねて来たんだ」
声を低めて、王逸は言った。
「実家のおふくろさんか?」
「ああ。河間からずっと歩きづめてきたらしくて、泥だらけだった。窓を叩かれてとび起きたら、月明かりの中庭に立っていたんだ」
(略)
「おふくろのやつ、一言も口をきかずにこの饅頭を俺に押し付けてな、庭のぬかるみに両膝をついて手を合わせたんだ。俺が声をかけようとすると懸命に首をふって、また逃げるように帰って行った。ひょこひょこって。あの纏足でどうやって都まで歩いてきたんだろう」
『蒼穹の昴』1 より
何気ない一ページにも満たない会話ですが、貧しい暮らしの中で、唯一の希望が息子だったんだろう、神にも等しい進士さまになるだろう息子の立派な姿を想うだけでこのお母さんは誇らしく、明日からも生きていけるんだろう、たった一度、饅頭を渡して一目その顔を見て……。
そう思うと、涙が出てきてしまいました。
何度も読んできた大好きな作品ながら、やはり、そのときそのときでまた新たな発見や感動があるものですね。
清王朝という大きな舞台だけでなく、貧しさに苦しむ最下層で生きる人々の姿も丁寧に描かれているからこそ、性器を切り落とした痛みに耐えきれず「おいらは犬や猫とどこもちがわない」といっそ死を選ぼうとする仲間に春児が叫ぶ、
「おまえは犬ころじゃねえ。人間なんだから、天子様と同じ人間なんだから」
という言葉が大きく胸を打つのです。
史実はどうなの?と気になった方におすすめの本
過酷な科挙の試験や、残酷な去勢シーンなど、あまりにも衝撃的な物語世界に「ちょっとまって、これはどこからどこまでが事実なの?」と気になってしまう方もいるでしょう。
そういう方におすすめの本もご紹介しておきます。
小説から背景となる歴史に興味をもって次々と興味が広がっていくのも読書の楽しさのひとつですよね
物語の主人公・春児は架空の人物ですが、小徳張という実在の宦官の逸話が取り入れられているそう。小徳張もまた、自ら鎌で性器を切り落とし、宦官として西太后のもとで出世した人物。彼については『最後の宦官 小徳張』という孫が聞いた話をまとめた本があるので、気になる方はぜひ。
信じがたいほどのあの恐ろしい去勢の話や、紫禁城でのあれこれは、こういった実話をもとにしていたのか…と知ると、さらに面白くなってきますよ。
また『科挙─中国の試験地獄』を読めば、本当に受験生の中には老人も少なくなかったことなど、まさしく地獄の試験であったことがわかります。
そして、稀代の悪女といわれる西太后のイメージは、この作品でがらりと変わることでしょう。西太后についてもっと知りたいと思った方は『西太后―大清帝国最後の光芒』がおすすめです。
浅田次郎のプロフィール
浅田次郎(あさだ・じろう)
1951年東京都生まれ。1995年『地下鉄(メトロ)に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員(ぽっぽや)』で第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、2006年『お腹(はら)召しませ』で第10回中央公論文芸賞と第十回司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞、2010年『終わらざる夏』で第64回毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。2015年紫綬褒章受章。2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞を受賞。2019年「蒼穹の昴」シリーズをはじめとする文学界への貢献で、第67回菊池寛賞を受賞。 『蒼穹の昴』を第一部とするシリーズは、第二部『珍妃の井戸』、第三部『中原の虹』、第四部『マンチュリアン・リポート』、第五部『天子蒙塵』と続いており、第六部に当たる最新作『兵諫』が2021年7月12日刊行予定。他の著書に『地下鉄に乗って』『おもかげ』『流人道中記』など多数。
浅田次郎ONLINE より
浅田次郎『蒼穹の昴』のまとめ
今回は、浅田次郎『蒼穹の昴』を紹介しました。
清王朝末期を舞台に、貧しい糞拾いの少年・春児と、長男の引き立て役として育てられてきた次男坊の文秀が、それぞれの運命へと歩き出し、やがて動乱の歴史の中へ身を投じていく波乱の物語。
- ハラハラ、ドキドキするような波乱万丈の物語が読みたい方
- 歴史が好き、中国や日本の近現代史に興味がある方(なくても大丈夫!)
- 読み応えがある長編作品を探している方
におすすめです。
現在第一巻は、AmazonのKindle Unlimited対象作品になっています。入会後30日間は無料なので、期間中にダウンロードすれば無料で読めます。対象作品は定期的に変わることがあるので、興味をもった方は早めにダウンロードだけでもしておきましょう。
◎『蒼穹の昴』を全巻読んだ方には、続編の『珍妃の井戸』もKindle Unlimitedの対象作品となっていますヨ!こちらもとってもおススメです◎
Kindle Unlimitedについて詳しくは下記の記事で紹介していますので、あわせてどうぞ。
ここまで読んでくださった方は、『蒼穹の昴』をぜったい読むべし読むべし!
それでは、また次の本でお会いしましょう。
いつも本と一緒。本と いる。
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