「爆発だー、爆発だー、爆発だー、芸術だー!」
という主題歌が耳に残って離れない。NHK Eテレで今年7月に放送された特撮テレビドラマ「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」をあなたは御覧になりましたか?
1970年代に実際に放送されていたかのような体で、レトロ感いっぱいに作られたこのべらぼうな主人公「タローマン」に私はもう釘付けでした笑
※「なんだ、これは!」という方はこちら(NHK公式サイト)へどうぞ。
簡単に説明すると、「芸術は爆発だ!」というキャッチフレーズで知られる芸術家・岡本太郎の唯一無二の作品群、そして心を鼓舞する言葉たちをもとに作られた、昭和風の特撮番組なのです。
カッコいい正義の味方……ではなく、いつもくねくねとシュールな動きをするタローマンと、岡本太郎の作品から飛び出した奇獣たちが戦ったり戦わなかったりする、べらぼうにでたらめな展開。
番組後半の、サカナクション・山口一郎さんの淡々としながらも熱いコメントもじわじわとクセになります。
- ブログ管理人:hontoiru
- 編集ディレクターを経て現在はフリーライター
- 本業では主に飲食系やエンタメ系のライティングを担当
- 趣味は読書、歴史、カフェ巡りなど
今回は、この特撮番組と連動している岡本太郎の大回顧展「展覧会 岡本太郎」のレポと、岡本太郎の名著『自分の中に毒をもて』の紹介という二本柱でお届けしたいと思います。岡本太郎作品のほとばしるエネルギーと、不思議なかわいさ。
そして「自分の中に毒をもて」とはどういうことなのか?
ぜひ最後までお楽しみください◎
魂が爆発する!熱気に満ちた岡本太郎展
最大規模のスケールで、大阪、東京、愛知を巡回するという「展覧会 岡本太郎」。私が訪れたのは大阪展(大阪中之島美術館)でした。(ちなみに今回の展覧会ではほぼすべての作品が撮影可!)
タローマンが放送された効果抜群というべきか。子どもから大人までたくさんの人で賑わい、会場は大変な熱気。入場制限がされており、事前の予約が必要だったのですが、それでも休日だったからか、かなりの混みようでした。
壁面一杯の大作から、立体物までぎっしり。ほとばしるエネルギーに圧倒されつつも、どこか愛嬌のあるキャラクターに惹きこまれてしまいます。
岡本太郎といえば、ポップな色調の大胆な作品のイメージが強いのですが、「傷ましき腕」のような少女の痛みが生々しく伝わって来る作品や、中国へ兵役で行った際に上司から命じられて描いたという肖像画にも驚きました。
抽象画でもなく具象画でもない、過去と現代が入り混じる。そんな不思議な岡本太郎作品。「森の掟」という作品では、古代を思わせる森からジッパーがついた不思議な生き物が飛び出すように勢いよく迫ってきます。ジッパーを開けたら中には何が入っているんでしょうか?
「歓喜の鐘」はもう鐘が爆発(笑)。オモシロイのはこの鐘はお寺の方から岡本太郎へ依頼があり、岡本太郎の方が戸惑ったそうです。なぜ岡本太郎にお寺の鐘を…? 頼んだお寺の方も相当オモシロイ。じわじわきます。
この「歓喜の鐘」は愛知県名古屋市にある「久国寺」で今も現役。普段は鐘をつくことはできませんが、大晦日には若干名がつけるそうです。
なんとも可愛い立体作品たちもたくさん。縄文時代に魅了されていた岡本太郎だけに、埴輪のような朴訥さもあり、しかしどこかに皮肉めいた気概が込められているような気もします。
たとえば手を胸の前にあげて「Non!」といっている作品は、ユーモラスながら拒絶することで確固たる自分を表している、そんな風にも感じられました。
拒絶する、と言えば……。
会場の中にはこんな椅子も置かれていました。これは「坐ることを拒否する椅子」。岡本太郎にとって、椅子という日常のものですら戦いであり、命の発露となる遊びがあるべきもののようです。
とはいえ、この椅子に座ることは可能です。しかし、顔のある凸凹したものにお尻を乗せるのはなんだか躊躇われる…。見ている人はみな、そんな表情をしています。居心地の良い椅子では思いもしなかったそんな感覚に気づくことこそ、岡本太郎の狙いなのでしょうか。なんだか椅子が「どうだ?」と不敵に笑っているようです。
展覧会を見ていると、ふと気づいたのは色使いが日本の民芸品に似ているなあということ。例えば福島の赤べこや、こけしなどを連想します。当時の芸術の最先端であったフランスで民俗学を学び、後年は縄文芸術にも共鳴していた岡本太郎。パリの洗練された街角から、土着的な日本の懐かしい風景が垣間見えるような不思議な気分に。
岡本太郎が多くの人々に愛される理由はこれなのかもしれない、──などと勝手な妄想をしてしまいました。
派手でポップな色彩の渦、「芸術は爆発だ!」というキャッチ―な言葉につい忘れてしまいますが、岡本太郎は実際に戦争を体験した、昭和という時代の芸術家。
第五福竜丸事件をテーマとした巨大作品「明日の神話」ほか、原爆をモチーフにした作品もあります。生々しい命の炸裂、叩きつけるような生の痛みもそれゆえの歓喜も感じられる、これはもう「べらぼう」な展覧会なのでした。
タローマングッズもありました!
展覧会を見終わった後も熱気は冷めやらず。もちろん皆さんグッズ売り場へ向かっていました。私もたんまり岡本太郎グッズ、タローマングッズをゲットしましたよ!
なんだか昭和の駄菓子屋さんで大人買いをしたよう。実際に昔放映されていた番組ではないのに、どうしてこんなに郷愁を感じさせるのでしょうか(笑)
(かつて)よいこ(だった大人)はもちろんゲットしましょう♪
「べらぼうな夢はあるか」「でたらめをやってごらん」など、タローマンは改めて今の世にすごいことを問いかけてくれている気がします。これはもう世紀の傑作(惚れてる)。
著作『自分の中に毒をもて』について
さて、たっぷりと岡本太郎のパワーを全身に浴びて来たわけですが、やはり読書ブログである当ブログとしては岡本太郎の著作についても触れなくてはなりません。
タローマンから岡本太郎に興味をもった人にもおススメ。
タローマンの言う「芸術は爆発だ」とは一体どんな意味なのか?
なぜ「うまくあるな、きれいであるな、心地よくあるな」なのか?
それはすべてこの本に書いてあるのです。
タローマンファンよ、今こそ読むべし!
『自分の中に毒をもて』のレビュー
現代に生きる私たちにも、強烈に響く岡本太郎の言葉。
「意外な発想を持たないとあなたの価値はでない」
「”モノマネ”人間には何も見えない」
「好かれる奴ほどダメになる」
目次を見るだけでもこんなハッとする言葉が並ぶ本書は、一ページごとにたるんだ頬を殴られるよう。
意外にも愛について書かれた内容も多く、「男と女に知的関係はあるか」など岡本太郎の先鋭的な愛についての考え方がとても興味深いです。
そして、岡本太郎の言葉として最も有名な「芸術は爆発だ」の「爆発の秘密」を知れば、岡本太郎作品の見方や、タローマンという存在の意味もよりくっきりと心の中に立ち上がってくるでしょう。
強烈に生きることは常に死を前提にしている。死という最もきびしい運命と直面して、はじめていのちが奮い立つのだ。
『自分の中に毒を持て』より
「本職?人間だ!」
そう答えた岡本太郎の生きざまをぜひ本書で深く知ってみてください。
そして己のいのちを奮い立たせようではありませんか。
岡本太郎のプロフィール
岡本太郎
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参画。パリ大学でマルセル・モースに民俗学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で『太陽の塔』を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。
『自分の中に毒を持て』より
岡本太郎展と著作についてのまとめ
今回は、NHK Eテレで今年7月に放送された特撮テレビドラマ「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」と連動して、大阪・東京・愛知と巡回される岡本太郎の大回顧展「展覧会 岡本太郎」のレポと、そして岡本太郎の著作『自分の中に毒を持て』の紹介という二本柱でお届けしました。
タローマンがきっかけで、岡本太郎に興味をもった方も多いでしょう。私もその一人です。
本当によくできた特撮活劇で、特に主題歌がすばらしい。タローマンを見て以来、岡本太郎の名言がいつも心で鳴り響いています。さらに著作『自分の中に毒を持て』を読むことで、もっと岡本太郎の言葉の真意に触れることができるでしょう。
これから展覧会は、東京や愛知を回りますが、巡回展が終わった後も、岡本太郎美術館で岡本太郎作品に触れることができますので、この記事を会期後にご覧になった方もご安心ください。
岡本太郎美術館のサイトはこちら
それではまた次の本でお会いしましょう。
いつも本と一緒。本と いる。
<読書習慣を身につけよう!>
・「Kindle Unlimited」/電子書籍読み放題(30日間無料体験)
小説・実用書・雑誌・漫画など幅広い作品が200万冊以上読み放題!
・「Audible(オーディブル)」/オーディオブック読み放題(30日間無料体験)
今話題の「聴く読書」オーディオブック12万冊以上が聴き放題!
お得なキャンペーンも随時開催されているので、ぜひチェックを◎
\30日間無料で試せる!/
\2月28日まで2ヶ月無料!/
コメント