ライトノベル好きな方も、がっつり文学好きな方も、どちらも夢中になってしまう楽しい物語。
それが松村進吉作「丹吉」です!
松村進吉氏は、2006年に怪談実話の著者発掘コンテスト「超‐1」で1位を獲得しデビュー。以来、怪談作家として活動中。
しかし、本作は今までの実話系の怪談作品とは違い、妖怪や神の使いである動物たちが令和の現代に大活躍する、ユーモアいっぱいのファンタジックな冒険活劇となっています。
私の今のイチ押し!とにかく出て来る動物たちがとってもかわいいです。笑いあり感動あり、特に中盤からノンストップで盛り上がっていきます!
うさぎも出て来るよ!
- ブログ管理人:hontoiru
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それでは、さっそくどんなお話か、あらすじを紹介していきましょう。
「丹吉」のあらすじ
かつてエッチな悪事がばれて、阿波の国(現在の徳島市方上町)にある弁天山の卑猥な形の岩に封じ込められてしまった、化け狸の丹吉。
ふとしたきっかけで、令和元年、弁天山を守る神・プチ弁天から「神使い候補」として復活させられ、妖怪退治を命じられてしまった。しかし令和の時代に、妖怪などそうそういるわけがない。
封印されていた間、神社に熱心に通っていた人間のとち子の目を通して現代社会を見ていた丹吉は、まずは封印が解かれた受肉の際に破れてしまったトレードマークの赤殿中(赤いふんどし)を、とち子に縫ってもらおうと考える。
そこへ、セクハラ男の毒牙にかかりそうになったとち子のSOSが届いた!
急ぎ、御目付役の神使い・蛇と共にとち子の元へ向かう丹吉だったが……。
※三話目まで、雑誌「怪と幽」(株式会社KADOKAWA)に連載。その後、書き下ろしを含めて単行本化されました。
「丹吉」の登場人物
雑誌『ダ・ヴィンチ』に掲載されたインタビューによると、登場人物たちは、作者・松村進吉氏のチャットでの自身や友人をモデルにして作られたそう。
それぞれ個性豊かで、どのキャラクターにも氏の愛情が感じられます。
・丹吉…主人公の化け狸。仔狸の頃は「赤殿中」などと呼ばれており、赤いふんどしがトレードマーク。長じてからはあちこちの寺の尼や村の後家など、人間の女性を相手にちょっとエッチな大冒険を繰り広げていたため、弁天山の卑猥な形をした岩の中へ封じられてしまった。しかし、令和元年、プチ弁天により封印を解かれ、神使い候補として阿波の国の平和を守るため妖怪変化を退治するよう命じられる。人間の姿に化けると、黒服の稗田礼二かミスター・ブロンド……と思っているのは本人だけで蛇いわく西田敏行似。
・蛇…プチ弁天の今のところ唯一の神使い。「神使い候補」として封印を解かれた丹吉のお目付け役として、丹吉の首にネクタイのように巻き付いていることが多い。冷静な突っ込み役。
・兎…出雲の大国主命に仕える修業中の神使い。修業の目標は「妖怪退治」であるが、妖怪を見つけられないため達成できず、もう二十年ほども出雲へ帰れていない。とある事件をきっかけに丹吉と知り合い、行動を共にするようになる。別名・バニー・ヒップ(BH)。あるいは「ぶにーやん」。インスタのフォロワー数2万ちょいを誇る世慣れたうさぎ。
・プチ弁天…四国は徳島県徳島市方上(かたのかみ)町にある弁天山。一応山とは名乗っているが、その標高は実に6.1m。その山を守る弁天もまた童女のような小ささで、丹吉たちから「プチ弁天」と呼ばれている。その小ささを、令和元年の神サミットの席で豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)にからかわれ、その悔しさに派手な妖怪退治をして力を見せつけてやろうと、自らの神使いとすべく丹吉の封印を解いた。
・松浦とち子…農業を営む両親と祖母の四人暮らしの三十七歳。今時めずらしく年に三百日以上、弁天山の祠に手を合わせ、その度に丹吉が封じ込められていた石を撫でるという行為をかれこれ三十年も続けているという、ガチ勢も唸らざるを得ない神社仏閣好き女子。最近の悩みは、取引先の担当者からのパワハラ&セクハラ。
ほか、見習いの仔猫・くっちゃねなど、魅力的なキャラクター多数。
「丹吉」のレビュー
「詰み‼」「かわよ~~~!」「ミソジニスト」「ポリコレ棒」など、令和ならではの流行り言葉やネットスラングが頻出。昔話や神話の豊富な知識をもとにしながら、あくまでも現代を描く「令和の化け狸物語」。仲間となるウサギやネコ、イヌたちも紙面から飛び出て来るようにイキイキと描写されていて、どんどんページをめくってしまう面白さです。
最初の3話辺りまでは、なるほどこういう展開で毎回進むのかな?と思っていたのですが、4話目以降からだんだん大きな事件の予感が……。
どどどどど……どうなるの???とハラハラしまくりでした。
このお話のベースは、松村進吉氏の出身地である阿波の国・徳島県に伝わる狸たちの大戦争「阿波狸合戦」だそう。ユーモラスなやりとりに目を奪われがちですが、神話と昔話で食い違う言い伝えなどを「レイヤーの違い」という解釈によって、ムリのない世界観に落とし込んでいるところも巧みすぎて唸ってしまいました。
本の表紙の絵のように、赤殿中をひらめかせ下心をぶらぶら揺らせる、まるで令和のおっさんヒーローともいうべき丹吉ですが、やがて自分の復活に大きな企みがからんでいることに気づき、物語は急展開を迎えていきます……。
ぜひこの続きは本書で読んでみてください。
読めば必ずやあなたも、丹吉やその仲間たちの魅力に
「………クッソかわじゃん!!」(BHの台詞)
と叫んでしまうことでしょう。
松村進吉(まつむら しんきち)プロフィール
作者の松村進吉氏は、徳島在住の怪談作家です。
1975年、徳島県生まれ。2006年、怪談実話の著者発掘コンテスト「超‐1」で1位を獲得しデビュー。<「超」怖い話>シリーズの五代目編著者を務める。共著に『男たちの怪談百物語』『ユゴスの囁き』『エモ怖』『末成仏百物語』『黄泉つなぎ百物語』、著者「異聞フラグメント」シリーズ、『「超」怖い話ベストセレクション 奈落』『セメント怪談稼業』『怪談稼業 浸蝕』など。本書が初の長編小説となる。
『丹吉』より
「丹吉」紹介のまとめ
今回は、私の今のイチ押し小説、阿波の国(徳島県)を舞台に、封印が解かれた化け狸・丹吉とその仲間たちが繰り広げる冒険活劇「丹吉」を紹介しました。
「丹吉」はこんな方におススメ!
- ラノベ好きな人&文学好きな人!
- ハラハラドキドキの冒険譚が好みの人!
- 妖怪や動物たちが活躍するお話が読みたい人!
昔話や神話が好きな人も楽しめると思います。
仕事に疲れている人も、可愛いキャラクターたちのやりとりに思わず噴き出して元気がもらえるはず♪
それではまた次の本でお会いしましょう。
いつも本と一緒。本と いる。
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