「どうして私は強くなれないんだろう」
「いつもうまくいかない、こんなにダメな人間はほかにいない…」
そう思って、落ち込んでしまうことありますよね。
私もときどきそんな波に飲まれることがあります。
「何を弱気な。くよくよしても仕方ない、もっとポジティブに考えないと!」
そんな元気な声に叱咤されたところで、なおさら毛布の中にもぐりこみたくなるばかり…。
本当に落ち込んでいるときは、前向きな言葉がかえって逆効果になってしまうこともあります。
そういうときは、絶望名人の言葉を聞いてみませんか?
絶望名人?そんな名人いるんでカフカ?
さすがusausa、Q&Aを一人で終わらせましたね
そう、絶望名人とは誰であろう、かの名作『変身』を書いたことで知られる、作家・フランツ・カフカ。
「朝起きたら巨大な毒虫になっていた」なんていう極めつけのシュール作品を書く作家だけに、絶望にまつわる言葉も表現が豊かすぎて、そのどん底精神っぷりには思わず笑ってしまうくらいです。
今回は、彼が生前書き残した言葉から、そのあまりにも見事というしかない絶望ぶりがわかる本『絶望名人カフカの人生論』をご紹介しましょう。
- ブログ管理人:hontoiru
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『絶望名人カフカの人生論』はこんな人におススメ
『絶望名人カフカの名言』はこんな人におススメします。
- 変りたいと思いながら今日も一歩が踏み出せなかった人
- 生きることが辛すぎて仕方ないと思っている人
- 今はポジティブな言葉なんかひと言も聞きたくない人
「少しのことにも先達はあらまほしきことなり」(どんなことにもその道の先生がほしいものだ)とは、兼好法師『徒然草』の一節ですが、「絶望」に関してもこれほどの先達がいらっしゃったとは、とあなたもきっとびっくりするはずです。
『絶望名人カフカの人生論』の内容
20世紀の大文豪、みんな一度は聞いたことがある『変身』の作者、フランツ・カフカ。大学を卒業後、保険局員として真面目に仕事に取り組む傍ら小説を書き続け、肺結核のため40歳という若さで亡くなりました。実は生前に本人が発表した作品は『変身』のみ。そのほかの作品は、死後に友人の手によって発表されたのです。
本書『絶望名人カフカの人生論』は、そんなカフカの日記やノート、手帳に書かれた愚痴や自虐的な言葉を集めたもの。
その言葉のひとつひとつに、カフカ作品の翻訳・評論を手がける頭木弘樹氏のあたたかな解説が付されています。
それぞれの言葉を書いたときどんな状況だったかが分かるため、より深くカフカの言葉の真意を理解することができます。
『絶望名人カフカの人生論』のレビュー
「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」
『絶望名人カフカの人生論』よりカフカの言葉
「目標があるのに、そこに至る道はない。
道を進んでいると思っているが、
実際には尻込みをしているのだ。
『絶望名人カフカの人生論』よりカフカの言葉
どうです? こんなにすらすらとためらいなく後ろ向きの言葉をあなたは書けますか?
そもそも、「ある朝目覚めたら巨大な毒虫になっていた」という書き出しで始まる『変身』も、どうしても部屋から出られない引きこもりの状態を表している作品といわれます。
現状を変えたいのになかなか変えられない、何でもポジティブさで解決しようとする風潮が肌に合わない。
そんな人にこそ、カフカの誰よりも深く落ち込み、誰よりも情けない弱音を吐いた言葉が、深く心に残ることでしょう。
ポジティブな考え方が最良とされる世の中とまったく逆のベクトル。思わずつっこみたくなるほどの超絶マイナス思考ですが、その底には人間の心理を読む鋭い観察眼があります。それゆえの諦念が、カフカに立ち上がることをやめさせるのかもしれません。
無力さに気づくからこそ絶望する
人間の根本的な弱さは、
勝利を手にできないことではなく、
せっかく手にした勝利を、活用しきれないことである
『絶望名人カフカの人生論』カフカの言葉より
カフカの鋭い観察眼が諦念、つまりあきらめの気持ちにつながっているのかも、と先程書きましたが、まさにこんなことに気づいてしまったら、もはや立ち上がる気力を失い、ただ横たわるしかありませんね。
お金、名誉、出世、結婚、長寿…。
なんとかそれらを手に入れようともがいているのが人間なのですが、必死で手に掴んだとしてもそれをうまく活用できるか、幸せになれるかというとそうでもありません。すべてはむなしい。
そんなところは気づかないでいいのにな~と思うのですが、そこは絶望名人です。
本書のあとがきには、ユダヤ人作家エリアス・カネッティの「多くの人は無力であるのに、カフカだけはその無力さに気づいている」といった意味のカフカ評も載っています。
理解されなくて苦しむ
私はこの言葉にもハッとさせられました。
お母さんがぼくにとても優しかったことは事実です。
しかし、お母さんのすることは、すべてあなた(父)に関係していたため、けっきょくは、ぼくとお母さんも良好な関係にあるとは言えませんでした。
お母さんは、無意識のうちに、狩猟における勢子の役割を果たしたのです。
『絶望名人カフカの人生論』カフカの父への手紙より
勢子とは狩猟のときに獲物を草むらから追い出したり、逃げないように防ぐ役割をする人のこと。
カフカの父親は非常に支配的な人物であったようで、それは妻(カフカからは母)にも及んでいたようです。カフカの親友は、カフカの婚約者に送った手紙に「カフカの母は彼を愛してはいるけれど、息子がどういう人間かまったく分かっていない。どんな愛情も、理解がまったく欠けていたらなんの役にも立ちません」と書いています。
家族関係がうまくいかなくて悩んでいる人、周囲に理解されなくて悩んでいる人には、大きく頷いたり、考えさせられる言葉も多いのではないでしょうか。
フランツ・カフカのプロフィール
フランツ・カフカ(Kafka,Franz)
(1883-1924)オーストリア=ハンガリー帝国領当時のプラハで、ユダヤ人の商家に生る。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核で夭折するまで実直に勤めた労働災害保険協会での日々は、官僚機構の冷酷奇怪な幻像を生む土壌となる。生前発表された『変身』、死後注目を集めることになる『審判』『城』等、人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実存主義文学の先駆者。
新潮社 著者ページ
まとめ:『絶望名人カフカの人生論』|落ち込んだときはカフカ先生に聞いてみよう
今回は、カフカの残した日記や手帳などから言葉を集めた『絶望名人カフカの人生論』を紹介しました。
世紀の文豪による、超絶マイナス思考の言葉の数々。あまりにも落ち込みすぎる言葉には、かえって読むものの笑いさえさそってくれる先達の書です。付された解説でカフカの人生を知れば、より言葉の真意が伝わってくるでしょう。
ちなみに本書を解説と共に読む限り、カフカは自ら望んで絶望しに行っているようなところがあります。それはもしかしたら、作家として本心半分、一種の世間への反骨精神半分だったのかもしれません。自分の作品についても、たとえ生前売れていたとしても底の浅い共感は良しとしなかったでしょう。そして何よりこんな絶望を味わいながら書いた作品が、彼を死後に文豪にし、こうして広く知られるようになるとは。世の中の成功・不成功とは、そう単純なものではありませんね。
すべてお終いだ、と思ったときに、ぜひ読んでほしい一冊です。
実は本書の編訳を行なった頭木弘樹氏も、大学時代に絶えず下血に襲われる潰瘍性大腸炎という難病を発症し、13年間にわたる闘病生活でどん底の絶望を味わってこられたそうです。本書のあとがきでもその一端が書かれていますが、とても興味深い産経の記事がありますので、こちらもあわせてお読みください。
落ち込んでいるときに読みたい本は、下記の記事でも特集しています。よろしければこちらもどうぞ。
それでは、また次の本でお会いしましょう。
いつも本と一緒。本といる。
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